2017年12月4日月曜日

引っ越し騒動~青年海外協力隊の住宅事情

引っ越しをした。残りは4カ月弱だ、もっと早く引っ越しをしとくべきで、一体今まで2年間の苦労は何だったのだろうと思う。

登場(予定の)人物をイラストにしてみた
が、カウンターパートとファットマダムは出てこない


 今でも覚えている。
ガーナに到着時のオリエンテーションで、ホームステイ先と赴任後の住居の写真が渡された。「ワ~!誰々の家、良いな~」など盛り上がる周囲を尻目に絶望的な気分だった。
ステイ先の家族はやさしく楽しかったが、家にトイレがないなど大変なことも多かった。
その経験を以前はこう記している
少し読み返すと、素直で、青臭く、今じゃ汚れちまったなあ

巨大なスピーカーの裏にあるのがホームステイ先
スピーカーからは一晩中お腹に響く轟音が流れ、眠れなかった


単身で生活する家はトイレとシャワーがあった。恵まれていると感じたが、あのホームステイを味わえば、大抵の所であれば良いと思うだろう。それが狙いだった…とは邪推だろうか。
ステイ先のバスルーム
シャワーはなく手前のバケツで流す


水の有無は地域差が大きい、ぼくの任地は町には水道は引かれているが、井戸まで水を汲みに行く家も多い。生活用水は井戸か雨、水が出ない蛇口、水洗でないトイレ、川で洗濯している隊員も見ているのでそれに比べれば狭いなど贅沢な悩みかもしれない。そこまで過酷な環境なら後日談として語ることもできそうだが、ぼくの家は全てが中途半端だった。

専有面積は16.5㎡と10畳程度、バストイレを除くと13㎡、8畳程度と日本でも狭いと感じるサイズだが、ダブルベッドと立派な机が鎮座し狭さに拍車がかかっていた。これより狭い家の隊員はいるのだろうか。
トイレにドアがなく、台所もなく料理は部屋の中、洗いものは風呂場だった。ひとり狭い部屋の中で料理に奮闘する中年男性はの姿は哀れで痛々しく映ったことだろう。


旧居の間取と大まかな家具の配置をCADがなかったのでwordで描いてみた
赤いのは問題と思われる場所
CADもwordもそれなりの検定に合格しているのだが…
2018年のテーマは説得力



来る前は、安全性などの面からその地域なりに良い住まいが提供されるのだろうとの思いはあった。
高床のテラスを備えたバンガローやコテージで、夜は野生動物の遠吠えが聞こえ、満天の星を眺めながらウイスキーをグビリ。それは期待を越えた夢想だった。本当にそんな隊員が存在するかはわからない。


ガーナの住居は水シャワーもしくはバケツシャワー、洗濯機、エアコンなしがデフォルトで、新居もそうだが、一般的に並みかやや上の環境が手に入ったことには満足している。元々が酷かったので快適さの垣根が低いのもあるが。
現地の水準での生活は大切だが、無意味にレベルの低い住居をあてがわれ、苦労を強要られていた気がする。


前の家と比べると倍以上の広さ
新居の間取りを描いてもは普通でつまらなかった
特筆はシンクを自腹でつけたことにあるのが、主婦の感覚


つげ義春の漫画で「便所を改造した1畳間に押し込められ、そこで悶々とした生活を送り、そこで自身もうじ虫のように化した」といった記述がある。
正にそれだった。部屋も荒れていた。大家には部屋に痰を吐かれた、外壁ではあるがおしっこをかけられたこともあるので驚かなかった。

大家がアブノーマルエキセントリックな考えと行動の持ち主なのは早々に察した。職場でも彼はいわくつきで評判だったようだ。それを知っていたはずなのに、なぜトンデモ大家の事故物件を選んだのだろうか。
大家は日本で働いた経験があり、若干の日本語を話す。それがメリットになると思われたのかもしれないが、旅先の「現地で日本語を話す人物は相手にするな」の鉄則が皮肉な位に真実味を帯びた。

カーテンをかける木の棒を持って来てしまったので返せとの要件で、新居にも来た。誰かに場所を訪ねて探したのだろうが「シャイニング」のジャックニコルソンを髣髴とさせる狂気を感じた。

大家は日本人女性と結婚したがっているが、例えば別れた恋人の家に来て貸したCDやお金を返せと催促しに来るようなストーカーまがいの行為とケチを改めなければ、どこの国の女性も射止めることはできないだろう。

おかしい人はその異常さに気づいていない、気づいているならばそれを直すからだ。気づいていたり指摘されても直さないのであれば、もっとおかしい。ぼくは他の人にはどのような姿で映っているのだろうかと考えることはある…無論多少は気づいているが…


万時がスムーズに運んだとは言い難いが、家を探し、諸処の手配をしてくれたカウンターパートと、この時期にもかかわらず引っ越しを認め、対応してくれた事務所の方に感謝している。