ガーナでは長距離バスの車内で牧師(clergyman)の説教に遭遇する。
それは布教活動か、移動で教会に行けない人のためのミサだと思っていた。
確かに、牧師の話に聞き入り、お祈りを唱える姿も散見する。
しかし、キリスト教徒でない、体調が悪い、などといった理由で歓迎しない人もいるだろう。教会に行く行かないは個人の自由だが、この場では選択の余地がない。筆者以外にも乗客はそれぞれ思うところがあるのではないか。
ミサはこのような形で行われます。マイクも使ってもうご機嫌。 ※写真と本文は関係ありません |
ガーナ国内でバスを何度も利用している日本人男性ヒロ氏はこう話してくれた
一連の流れは大体こうなっています。発車と同時に牧師風の男性が話し始めます。大声で、時にはマイクを使用し、聖書を読んで解説をします。とにかくうるさいので、「早く終わってくれ…」と思います。
30分ほどたって一通りの話が終わり「静かになった…」と思うと、鞄の中なら軟膏や錠剤を取り出し、説明を始めます。
聖書で薬草について触れている項を持ち出しているのでしょう。実際、聖書は医学書が一般に出回っていなかったころ、民間療法や健康食品ガイドのような役目も担っていましたからね。体にいい、病気が治る~などとも言っているのでしょう。その薬らしきものを乗客に売ろうとします。時々、本物の草もちらつかせ、興味を持った人に匂いを嗅がせたりしますが、結構な人がそれを買っていることに驚きます、サクラなのではと疑ってしまいます。
売れ行きが悪いと粘ります。
この方も牧師です ※写真と本文は関係ありません |
~もう買うまで帰らないぞ。警察でも何処でも行ってくれ、オレはムショ帰りだから怖くないぞ。これは万病に効くんだ、医者も匙を投げた不治の病があっという間に治癒したんだよ。寝たきりだったおばあちゃんも今じゃ元気に畑仕事をしているよ。それに何てったって神のご加護が付いているんだ、飲めばたちまち異性にモテまくり、金運アップ、仕事運が上昇。※効果には個人差があります。本当は1つ20セディのところを今日は10セディでどうだ。3つで20セディだ。これ仕入れて、人に売れば2セディのマージンが入ってあなたも大金持ち、会員を増やせばあなたも特別会員。今日は特別に良く落ちる洗剤もセット、あなたの家と汚れと罪も綺麗に綺麗サッパリ。実は昨日の晩、教会が火事で燃えちゃったんだ、命からがら逃げだしたけど、今じゃこの身一つ、助けるつもりでこれを買っておくんなせえ。そこのあなた、後ろに悪い霊が取りついているよ、この薬を飲んで、教会代々伝わるこの壺を買えばあっという間に悪霊払いができるよ~
墓地にあった天使の像 |
と言った感じでまくし立てます。もはや牧師といった聖職者でなく売人にしか見えません。その間には歌も挟むのですが。雄たけび、絶叫、ノイズです。この時点で1時間近く経っています。もうバスジャックされた心境です。この苦痛から逃れられる位なら、買うから、入信するから、終わりにしてくれ…と思う時があります、マインドコントロールされている気分です。
でもこれ日本じゃ違法行為なんじゃないのかって、不安商法、霊感商法、押し売り、マルチ、キャッチセールス、全部入りの悪徳商法ですよね。
だけど、ガーナでは公共の場所であっても宗教を盾にとれば容認されるのでしょう。ぼくはこのやり方を活動に使うことはできないかと考えました。
聖書を読んで食べ物や飲み物の記述、健康について触れている箇所をチェックして、ワークショップで引用句を使いました。
乳と蜂蜜は身体に良いとありますので寝る前に飲んでいます。お酒・・・ブドウ酒はたしなみます、愉快に飲むことは良いとされていますし、水よりも雑菌が入りづらいですからね。
近い将来、ガーナのバスに日本人の自称牧師が乗ってきて、健康食品のセールスをする、という噂が出たら、それはきっとぼくだと思ってください。
助けてください |
バス内で宗教を騙った営業を行うには、バス会社に事前に交渉するのか、ドライバーに許可を得ればよいのか、それともガイドのようにセットなのか筆者は知る由もない。だが、物売りのように何人もいることはないので、何らかの秩序やルールがあるのだろう。
ただ、アメリカのあるサイトは一言でこう評している。
nuisance(迷惑行為)だと。