同期の隊員が身辺整理やあいさつ回りと活動を締めくくる中、ぼくはワークショップの準備や実行に終われ多忙な日々を送っていた。
ワークショップ自体は随分前から計画していた。
当初は、生産者がココナッツオイルについての説明、栄養士による健康上のメリット、調理実習とレシピ紹介の予定だった。
配属先が主体となり保健局と生産者、農家などを巻き込むはずだったが全く進展せず、開催をあきらめていた。
カカオの実を天日干し |
そんな折、カカオ農家を訪問する機会があり、そこでインスパイアされたものがあった。
近所でココアパウダーが廉価で売っており、ココナッツオイルと混ぜてチョコレートができることを知った。
懇意にしているココナッツオイル生産者にチョコレート作りのワークショップを提案すると、とんとん拍子で話が進んだ。
ガーナ人の味覚に合わせるため試作と味見を繰り返し感想を尋ねた。
打ち合わせで何度も生産者のもとに通い、調理のデモンストレーションを披露し好感触を得た。
資料作り、ファシリテーター、調理と多くを担当したが、自分の思った形で進められた。
デモンストレーション兼試食会の様子 いい大人ががっついて~ |
開催を2回とし、参加者は近隣住民で合計25人程度と見込んだ。大規模なものを1回よりも小規模でも繰り返した方が、参加者も都合を合わせやすく、口コミ等の波及効果も大きいと云われる。第二弾はブラッシュアップしたものを提供できるとも考えた。
当日は驚いたことに30分前には多くの人が集まっており、予定の15分位前にはスタートできた。
生産者からの説明 |
まず、趣旨と流れについて説明、材料の紹介。
完全ローカルメイドのチョコレートを目指したが、惜しむらくは、材料の練乳が缶入りの工業製品であること、近隣でココアパウダーの加工をしている場所を見つけられなかったことだ。
湯せんしたココナッツオイルに、カカオパウダー、蜂蜜、練乳を入れて混ぜる |
しずかに混ぜる |
その後、調理実習と試食と続いた。チョコレートは冷蔵庫で冷やし固めるのに1時間ほどかかるので、料理番組のように事前に仕込んだものを用意した。その日作ったクリーム状のチョコレートはスプレッドよろしくパンに塗って提供した。
冷やし固める前に、柔らかい状態でパンに塗って食べる いじめになるので顔に塗ってはいけない |
ワークショップを開催しようとすると、交通費の負担、お菓子やジュースの配布で、純粋な経費と同等のコストが必要になる。
2回目の開催時、生産者の方から、リフレッシュメント(参加者に配られる飲み物や軽食)なしでやると言ってくれた。
さあお食べ 顔には塗らないように |
役所主体の内容で計画を練っていた頃、リフレッシュメントを出すならばココナッツオイルやパウダーを使ったクッキーなどにするべきだと主張したが、いまいちピンと来ないようだった。開催と体面を重んじ、結果は気にしないのだろう。
冷やすとこのように固まる、食感は生チョコに近い |
合計41人と予定を上回る参加者を迎えることができ、参加者の反応も上々だったが、2回目のワークショップ前日夜から停電が続き、作りおいたチョコレートが溶けたのが残念だった。
また、健康上の効能を謳っても病名など難しく、参加者の大半は理解していないようで、イラストなどを用いればわかりやすくなると思う。
当日配布したレシピ |
市販品より安く作れ、添加物が少なく栄養価の高いものになると訴えても現地の人にとっては気軽に手を出せるものではない。実際に作ったりココナッツオイルの売上に反映されるより、ぼくの活動に対して人が興味を持ってもらえることを期待した。
ココナッツオイルの生産者は、次は(ココナッツオイルを原料とした)ヘアーオイルやコスメティック等のワークショップをやりたいと話した。この意見はワークショップへの手ごたえであり、お互い今後のモチベーションにつながるはずだ。
会場の準備や、頼んでいた品なども卒なくそろえてもらい、参加者にも手伝ってもらったおかげでスムーズに進行できた。
お湯を沸かすのも準備 |
活動の形を残すというより、ガーナ人の考えや行動を見直し、残された期間を地元の人と同じ目線で活動する意欲と自信となった。
今回の件で関わったすべての方に感謝している。
この頃は市場で売っているモノ、食材などを再発掘し、お店の人や市井の人たちと話す機会も増え日々の生活も楽しめるようになった。
そして今は任地が好きになっている。ガーナに対しては…答えを控えたいが、情に近い想いは持っている。
あと5カ月どう気持ちの変化があるか、それも一興だ。
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