以前、ココナッツオイルとココアパウダーでチョコレートを作るワークショップを開催したことがある。
http://sekaihiroshi.blogspot.com/2017/10/blog-post.html
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後日、同僚に同等な品を振る舞ったが「オイル臭いし焦げ臭い。(このチョコレートは出来そこないだ。食べられないよ)」と言われた。
正直、匂いは承知してたが、気にならないだろうと少し見くびっていたので意外だった。
同僚達にはお土産でチョコレートを渡すことがあり、舌が肥えてきたのだろう。活動も終盤になり、今までは遠慮していたことを言えるようになったこともある。
ぼくが先日ガーナ食そのものを否定したことに対する腹いせかもしれないが、正直な意見は有難かった。
ぼくが先日ガーナ食そのものを否定したことに対する腹いせかもしれないが、正直な意見は有難かった。
「一週間待ってください。本当のチョコレートをご用意しますよ。」と見栄を切り、新しいチョコレート作りが始まった。
ココナッツオイルとココアバター(カカオバター)
ココナッツオイルの融点は25℃程度。ガーナの常温では溶けるため要冷蔵で、外に持ち出す時には保冷する必要があった。チョコレート作りに使う場合、量が少ないとマーガリン並みの固さにしかならず、大量に入れるので、匂いの少ないものを選ばないといけない。
フレッシュなカカオの実 |
カカオから抽出されるココアバターは融点35℃なので常温保存可で、炎天下に晒すなどしなければ問題なく外へ持ち出せる。本当のチョコレートの味を求めるためにもココアバターを探したが、スキンケア用に他の成分が配合されたものしか見つからなかった。
究極のカカオ豆を求めて
天日干しされる収穫されたカカオ |
豆の値段はキロ7.5GHS(日本円で300円程度)だった。相場が判らなかったがガーナの物価をしても高いと感じなかった。調べたところ、変動はあるが国際取引価格で1㌧3,000$位だった。大体の換算で1キロ当たり300円強。実際の農家の出荷価格はもっと安いだろうから、図らずしてフェアトレードを行っていたことになる。我ながら持っていると思わせたが、農家からすれば我ながらボッてると思ったかもしれない。しかしこの際、win-winとしたい。
それを2キロ分貰った。秤を使わない丼勘定で心配だったが、自宅で計量すると2.8キロあった。
農家までの地図。これを頼りにノーミスでたどり着いた。今の世の中にはこの地図のように単純明快なものが必要だ |
過程と材料、器具
工程
1焙煎(その前に豆を洗浄することもある)
2皮むき
3精錬
4テンパリング
5型入れ、熟成
材料
カカオ豆(今回は150g程度を使用)
砂糖
粉末乳
器具
焙煎するもの(オーブンやフライパンなど)
ミルサーかフードプロセッサー
すり鉢、すりこぎ
焙煎
焙煎前の豆は酸味を含んだ香りが強いが、次第にコーヒーにも通じた芳香に変化してゆく。
焙煎する装置がないのでフライパンを使用 |
炒ったカカオ(実はアーモンドとか) |
殻剥き
これが胚芽 |
ちょっとした工夫
固い殻には鋏で割れ目を入れ、豆を手に取る➡皮むき➡殻を捨てるの一連の作業が効率よく行えるポジションを探った。元々の要請であったKAIZENをガーナで普及できず、自ら実践しているのは皮肉なことだ。
作業の末、理想的なポジショニングを編み出した。ガーナ人も機械や設備がないから仕事が捗らないと嘆くなら、現状を認めてできることをしてほしい |
粉砕
殻からカカオニブと呼ばれる中身を取り出し、それを砕いて練ってペーストにする精錬(コンチング)を行う。
殻を剥いてカカオニブを取り出す |
ミルサーにかける |
プロの業者や工場ではコンチングマシーンと言う機械を使い12時間~70時間練り続け滑らかなペーストに仕上げる。これが手作りと最も差が出る工程になる。
粉砕はミルで行った。コーヒー豆を挽いたような状態から摩擦熱で脂分が溶け出しペースト状に変化したものをカカオマス(チョコレートリキュール)という。
先ずは粉末状になる |
脂が溶け出しカカオマスに変化する |
ココアバターは人力では作れない
猫の手も借りたい。餌あげてるんだから仕事手伝え。 |
精錬(コンチング)
コンチングを家庭用のミルやフードプロセッサーで続けると、カカオマスの粘度でモーターに負荷がかかり焼き切れるので、すり鉢とすりこぎの作業に切り替える。
ひたすら擦り続けるのみ |
この作業が最も骨が折れ、いくらゴリゴリやってもカカオの細かい粒が残る。夜も更けたので本日の作業を切り上げた。
翌日に持ち越す
翌朝チョコレートは固まっていた。食べるとざらついてはいるがチョコレートらしくなっている。
見事に固まっている。手が痛くなったので手袋を着用。 |
トラブル発生
だが湯せんで溶かしている最中、水が混入しボソボソになった。本当にここは注意すべきだ。
再度ミルにかけたりしてペースト状に戻し、滑らかにはなったがザラザラは残っている。諦めて次に移る。
見た目の滑らかさは戻った |
ミキシング
砂糖と粉ミルクを混ぜる。カカオの味を確認したかったので、砂糖を20%、ミルクを10%程度に留めた。
粉ミルクと砂糖を控えめに入れてゴリゴリ |
テンパリング
砂糖は粒子が粗いと、なかなか溶けずますます食感が悪くなる。事前に細かく擦っておくなどした方が良い。
次はテンパリング。湯せんで50℃まで温め、冷水で27℃まで冷やしてから、30℃まで戻す。
この作業は、砂糖や脂分が浮き出るブルームという現象を防いで、滑らかな口当たりになる。
この作業は、砂糖や脂分が浮き出るブルームという現象を防いで、滑らかな口当たりになる。
このテンパったペーストを型に流し込むが、作業者も完全にテンパることうけあい。
直火だと焦げる可能性がある |
先ずは50℃ |
27℃→30℃。温度管理が微妙で写真どころではなかった。 |
ナッツでごまかす
このまま固めてもボソボソ感が気になると思い、プレーンの他に砕いたピーナツを混ぜたものも作ることにした。
ナッツも炒って皮をむく |
ピーナツもゴリゴリ |
型入れ
冷蔵庫でなく、常温で3日ほど置くと熟成されるという。市販品の場合1週間ほど寝かすという。
型入れ終了、既に見栄えは悪いが、やっと作業から解放された嬉しさでいっぱいだった |
実食
機は熟した。製氷用の型を使ったので、型入れと取り出しに難儀し見栄えはしなかった。これでは、握手会、撮影会で推しメンを前に「これボクの手作りチョコなんですぅ~。食べてくださ~い。グヘグヘ」と臆面もなく差し入れても、即行ゴミ箱行き、インスタにすらアップしてもらえないだろう。
完成品。グヘグヘ、インスタ萎え |
さてお味は
安価なカカオ○○%といったのはただ苦いだけだが、ビターなチョコレートを好み、コーヒーをブラックで飲む人には受けると思う。
食感は意外に固く、ザラつきボソボソは否めないが、これはこれで焼きチョコのようで許せた。ナッツ入りの方はザラついた部分がかなり誤魔化されていた。
1週間経つ頃には食感も気にならなくなってきた(慣れただけか?)しかし、風味も薄れている感じもしたので、熟成は3日前後がベストかもしれない。
パンや菓子に使うのも食感が気にならなくなりそうで、応用できるのは間違いない。