ピエロの司会で催しが繰り広げられる公園と通りを挟んだ家の玄関先に幼い女の子が立っていた。
折角なのだから参加すればよいのにと思ったが、輪の中に入りたいけど気恥ずかしくて人ごみを遠目に眺めているだけ、と勝手に解釈をした。むしろ、そうあって欲しいという妄想に近い願望であった。
次の日夕食を摂ろうと食堂へ向かう途中、ピエロ公園の前を通ると男性に「おい、彼女は公園にいるぞ。」と声をかけられた。
今日は別に彼女に逢いに来たわけではなかったのだが、昨日のやりとりを見ていたのだろう。よほど、ぼくが彼女を気に入ったと見たらしい。
確かに彼女は公園にいた、そして今日も一人だったことで昨日の妄想があながち外れではないとの思いがますます強まった。
声をかけてきた男に気持ちが助長されたこともあり、彼女がとてつもなくいじらしく見えてきた。
その時、ぼくのバッグの中にはネックレスが入っていた。
今朝エルネストさんの奥さんにプレゼントしようと思ったが、残念ながらサイズが合わずバッグの中にしまいこんだままだったのだ。
それを取り出し彼女の首にかけた。
「グラシアス」と「バイバイ」の細い声。見えなくなるまでずっと手を振る姿、そしてぼくは別れを惜しむように何度も振り返った。
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