2015年6月14日日曜日

キューバ旅行記19 セルフショット~ラス・ツナス

     小さな公園でステージ上の男女ペアのピエロの周りに子供たちが集まっていた。
    ピエロはおどけた調子で歌ったり踊ったり、何人かの子供をステージに上げ、ぼくたちがごく一般にイメージするものと変わらなかった。

     そういえば、実物のピエロを見たのは久々であった。...
    子供向けの娯楽がまだまだ少ないキューバでは、ピエロは子供たちを楽しませる存在として機能しているのだろう。
    そしてぼくはもうピエロを見ても笑えない。
    それは、娯楽が飽和したことよりも自分たちが少なからず道化を演じなければ生きづらい世界にいるからだ。

     ピエロを笑うことは自身を笑うことになる。しかし、人は笑いたい、しかも自分より明らかに劣る存在に対して。
    そして他人を笑わせたい欲求と笑われたくない羞恥心との葛藤の間に揺らいでいる。
    ピエロは顔色や体調が悪くても精神的にふさぎ込んでいても、白塗りの化粧で常に明るく楽しく振る舞わなければならない。
    その下には人間の顔があることを知っているから、やはりぼくはピエロを笑えない。


     「ピエロを面白がって撮るくらいなら、お前の方がよっぽど滑稽だぜ。」
    「自撮りしろよ自撮り!そっちの方がピエロだぜ!あっはっは、そっかお前はピエロじゃなくて単なるエロか。」
    ピエロの素顔からそんな声が聞こえてきそうだ。

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